2019年8月21日(火)、第3回基礎力養成講座を行いました。
今回のメインレクチャーは理学部の松本剛昭先生の「赤外線を使った分子科学〜目には見えない光で分子の指紋を読み解く〜」です。赤外線は電磁波の一種であり、可視光線より波長が長いものです。この赤外線には分子の構造を引き延ばしたり折り曲げたりする性質があり、これを用いて様々な分子の指紋を読み取ることができます。先生は電場の概念や光の発生の仕組みを説明されたあと、塩化水素、アセトン、メタノールに赤外線を当て吸収された波長の赤外スペクトルを示されました。同じ分子でも蒸気、液体など状態の違いによりスペクトルも異なることから、分子やその状態(指紋)が判別できます。また、赤外線は天文学の分野での活用も進んでいるようです。講義後に受講生から本日の内容の本質をついた質問が多く出されました。松本先生からは赤外線と他の光の異なる点は何か、どんな分子に赤外線を照射してその幾何構造を知りたいか、赤外線を使った研究テーマを考えてみよう、という課題が与えられました。
今日は第1期の修了生でこの春大学に進学した4人のOG/OBが来学し、昼休みのアイスブレーク、午後は受講生とともにワークショップを行いました。ワークシップのテーマは、「未来の科学と社会について、OG/OBと考える、−科学技術はどのようにして人類を幸せにするか−」です。科学技術と社会の関係を考察する過去の事例を各グループのそれぞれが発表し、前回学んだKJ法で整理をしていきました。議論や作業に十分な時間が取れませんでしたが各グループともそれぞれの視点でまとめたものを発表しました。
基礎力養成講座終了後には、研究力指導の先生との面談と、OG/OB・現役生・先生方との交流会(FSS同窓会)が行われました。
<受講生の感想など(ニュースレター掲載分を含む)>
私はとても身近な赤外線で分子の幾何構造を判別できるとは思っていなかったのでとても驚きました。私も赤外線を使って電子工作をよくしたので赤外線を利用する点に親近感を持ちました。赤外線はリモコンなどの汎用通信や、温度測定、暗所撮影など現在の科学技術を支える縁の下の力持ちのような存在であることを改めて認識させられました。
分子構造の解析手段としては非常に画期的だと感じたのは数値とグラフで分子を言い当てる点です。しかし分子を直接我々の目で観察しているわけではありません。知覚できないものを、ある手段を使って見ようとする。そこに浪漫を感じました。
赤外線だけを見たら物理の分野になってしまうけど、赤外線の特徴を生かして化学や天文学に繋げられるということにとても驚いた。分子の種類は赤外線スペクトルを読み解くことで明らかになることが分かったが、なぜ数値で何の伸縮・変角かが分かるようになったのか不思議に感じた。もし赤外線以外の種類の光を当てた場合、分子の伸縮が起きるのかどうか知りたいと思った。全ての光には波長があるから振動はすると考えた。
光と電場との関係を具体的にイメージしやすい形で教わることができてとても興味深い講義だった。赤外線による分子の幾何構造の解明の仕組みをバネのイメージを用いてわかりやすく説明していただいたことで、非常に身近に感じることができた。
私は、物理分野である「光」や「音」などの、具体的に目に見えないようなものについての勉強があまり得意ではありません。また、今回の話の内容にも多くでてきた、分子の構造などのミクロの世界も想像することが苦手で、理解するのに時間がかかってしまいます。そのため、今までそのようなことに興味を持ったことはほとんどありませんでした。しかし、今回の講座を聞き、純粋に「赤外線って面白いなあ。」と思いました。特に、その性質を生かして宇宙にフラーレンが存在することを証明したということには、とても驚き、自分もそんなすごい発見をしてみたいと思いました。私の研究は生物分野に入るとは思いますが、だからといって固定考えを持つのではなく、それこそ分野横断的な視点からまた自分たちの研究を振り返ってみることで、新たな気づきが見つかるのかもしれないと思いました。また、機会があれば赤外線について勉強したいと思います、ありがとうございました。